一般社団法人新金属協会

シリコン部会 プレスリリース

シリコン部会(部会長:角谷 宏 信越半導体株式会社 社長室 担当部長)は、10月8日に2019年の実績、シリコンメーカーの決算(連結ベース)、2020年の状況・見通しについて公表しました。

 

1.2019年の実績

1-1)2019年の世界半導体市場は米中貿易摩擦やBrexit等に代表される地政学的リスクの顕在化による景況感の悪化、5G化進展に伴うスマートフォンの買い控えやデータセンター投資の一服感により、メモリを中心に大きな調整局面に入った。WSTS統計によれば、2019年の金額ベースの市場規模は前年比12%減の4,123億ドルであり、シリコンウエーハ出荷面積と相関があるIC半導体出荷個数についても前年比6%減の2,911億個であった。

1-2)2019年の世界シリコンウエーハ市場は、半導体需要の減速とそれに伴うウエーハ在庫の過剰感から市況が軟化した。SEMI統計によると、2019年の半導体用シリコンウエーハ出荷面積は前年比7%減の118億平方インチとなった。また、販売金額は前年比2%減の112億ドルであったが、1平方インチあたりの平均単価は前年比6%増の0.94ドルとなった。

1-3)当部会集計の国内高純度シリコン統計によれば、2019年の国内単結晶生産は、世界シリコンウエーハ市場と同様に調整局面となり、前年比6%減の9,385トンと10,000トンの大台を割り込んだ。

国内単結晶の販売についても、前年比6%減の10,296トンであった。国内向けは前年比8%減の4,116トン、海外向けは前年比5%減の6,180トンとなり、輸出比率は前年の59%から60%に拡大した。

 

2.シリコンメーカーの2019年決算(連結ベース)

2-1)当部会加盟社の2019年決算期ベースの売上高合計は10,344億円であった。半導体需要の減速により前年比3%減となったものの2年連続で1兆円を上回った。

2-2)設備投資は、先端半導体の拡大に伴う高精度化対応や能力増強等の投資継続により、前年比11%増の1,845億円となった。

2-3)研究開発費は前年並みの238億円であった。2011年以降ほぼ横這いで推移しており、最先端半導体微細化進展に対応する高精度ウエーハ、環境・省エネルギー対応のパワーデバイス向けウエーハ等の開発である。

2-4)営業利益は、2017年以降需給バランスの改善により収益が向上し、2019年は2,857億円、利益率28%になった。前年比では14%減となった。

 

3.2020年の状況・見通し

3-1)2020年の半導体市場は、米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの感染拡大によるマクロ経済への影響が観られるものの、次世代通信規格5Gの本格化やリモートワークの広がりによるPC・サーバー向けの需要増により堅調に推移している。

2020年春季WSTS市場予測によれば、2020年の半導体市場は、前年比+3%の4,260億ドル、2021年も+6%の成長を予想している。また、今年1-6月の半導体出荷金額累計はメモリの回復により前年同期比+6%となっている。

3-2)SEMI統計による世界シリコンウエーハ市場は、2019年4Qを底に回復しており、今年1-6月のシリコン出荷面積累計は前年比1%増の60億7千万平方インチとなった。特にメモリ、ロジック向け300mmの需要が堅調である。

3-3)当部会集計の国内単結晶生産・販売の1-8月累計実績は、ほぼ前年並みで推移している。今後も300mmを中心に堅調な需要を期待するが、新型コロナウイルスの影響懸念もある。

多結晶需要についても、半導体需要の回復に伴い生産量は増加する見込みである。

 

4.今後の課題

シリコン業界を取り巻く事業環境は、半導体メーカーの事業再編、中国製造2025の動き、米中貿易摩擦、コロナ禍でのデジタル化拡大、極限までの半導体微細化進展など、様々な需要構造変化が続いており、更には国内固有の懸念事項として、世界的に割高な国内電力料金の問題もある。

また、安全面においても安全操業確保の諸施策を検討し、新金属協会「災害防止対策安全委員会」で策定した行動計画を協会会員会社に展開し、安全管理体制の強化に継続的に取り組んでいる。

シリコン部会加盟各社は、需要構造変化への対応と共に、最先端半導体の高精度要求を満たす品質高度化、生産性向上と合理化による不断のコスト低減に取り組んでおり、環境負荷軽減に向けたパワー半導体需要にも対応していく所存である。

また、シリコン部会は、新金属協会の「半導体サプライチェーン材料規格研究会」と連携し、パワー半導体向け材料の標準化活動なども推進している。

 

〔今後のシリコン業界の課題〕

①需要構造変化と品質高度化への対応

1)最先端デバイスの高精度要求への対応

2)環境・省エネルギー用パワー半導体への対応

3)生産性向上と不断のコスト低減

②世界的に割高な国内電力料金への対応

③拡大する半導体市場への安定供給

以上