一般社団法人新金属協会

シリコン部会 プレスリリース

シリコン部会(部会長:角谷 宏 信越半導体株式会社 社長室 担当部長)は、10月27日に2021年の実績、シリコンメーカーの決算(連結ベース)、2022年の状況・見通しについて公表しました。                               

1.2021年の実績

1-1)2021年の世界半導体市場はリモートワークや巣ごもり需要に伴うPC・ゲーム機器需要に加え、5Gの更なる普及に伴う通信機器の高性能化やデータセンター需要の拡大、さらにはワクチン接種範囲の拡大に伴う経済活動の復活などにより好調に推移した。
WSTS統計によれば、2021年の市場規模は金額ベースで前年比26%増の5,549億ドルとなり、過去最高を更新した。シリコンウエーハ出荷面積と相関があるIC半導体出荷個数についても前年比24%増の3,837億個となった。

1-2)2021年の世界シリコンウエーハ市場は旺盛な半導体需要により好調に推移した。300mmはロジック、メモリ向け需要が前年に引き続き好調であり、200mm以下でも民生・車載向け需要が回復した。SEMI統計によると、2021年の半導体用シリコンウエーハ出荷面積は前年比14%増の142億平方インチとなり過去最高を記録した。販売金額は前年比13%増の126億ドルとなり、1平方インチ当りの平均単価は前年比1%減の0.9ドルとなった。

1-3)当部会集計の国内高純度シリコン統計によれば、2021年の国内単結晶生産はシリコンウエーハ市場と同様に堅調に推移し、前年比11%増の10,447トンで過去最高を更新した。国内単結晶の販売についても、前年比14%増の11,915トンと過去最高となった。海外向けが前年比18%増と伸長し、7,711トンになり、国内向けは前年比6%増の4,204トンと回復した。その結果、輸出比率は前年の62%から65%に拡大した。

2.シリコンメーカーの2021年決算(連結ベース)

2-1)当部会加盟社の2021年決算期ベースの売上高合計は11,648億円であった。旺盛な半導体需要によるウエーハ出荷量の増加により前年比15%増となり13年振りに1.1兆円を上回った。

2-2)設備投資額は300mmの設備増強等により高いレベルで推移しており、前年比44%増の1,981億円となった。

2-3)研究開発費は半導体微細化に対応する高精度化、環境・省エネルギー対応のパワーデバイス向け開発等を継続しており、前年比15%増の277億円であった。

2-4)営業利益は、2017年以降需給バランスの改善により収益が向上しており、
2021年は堅調な需要により出荷量が増加したことから、前年比28%増の3,282億円となり、利益率も28%と高い水準を維持した。

3.2022年上半期の状況・年間見通し

3-1)2022年の半導体市場は、米中貿易摩擦やロシアによるウクライナ侵攻等政情不安の継続、中国経済の減速と世界的なインフレによるマクロ景気への影響もあり、堅調な需要に一部陰りが見え、スマホ、PC、民生向けデバイスで調整局面に入ったものの、EV、グリーン関連は好調であり、ロジック等の需要は引き続き堅調との見方から総合的には成長が見込まれる。

 2022年夏季WSTS市場予測によれば、2022年の半導体市場は、前年比+14%の6,332億ドル、2023年も+5%の成長を予想している。また、今年1-6月の半導体出荷金額累計では堅調な需要の継続により前年同期比18%増となっている。

3-2)SEMI統計による世界シリコンウエーハ市場は、2020年以降伸長を継続しており、今年1-6月のシリコン出荷面積累計は前年同期比7%増の74億平方インチとなり、4半期ベースで過去最高を更新した。
 
3-3)当部会集計の国内単結晶生産・販売の1-6月累計実績は、生産が前年同期比+11%、販売が前年同期比+9%と好調に推移している。今後も300mmを中心に堅調な需要を期待するが、ウエーハメーカーの能力増は限定的であり、生産・販売共に年間では年初予測の+5%を見込む。
 
 多結晶需要についても、半導体向けシリコンウエーハ需要の拡大に伴い、生産量は増加する見込みである。

4.今後の課題

シリコン業界を取り巻く事業環境は、米中対立、台湾有事等の地政学的リスクによる半導体自国誘致の動き、メタバース等新デジタル産業の拡大、中国シリコンメーカーの台頭、極限までの半導体微細化進展および3次元積層化技術展開など、様々な需要構造変化が続いており、更には世界的なインフレによる原材料高、国内固有の懸念事項として、世界的に割高な国内電力料金の問題もある。

シリコン部会加盟各社は、需要構造変化への対応と共に、最先端半導体の高精度要求を満たす品質高度化、生産性向上と合理化による不断のコスト低減に取り組んでおり、環境負荷軽減に向けたパワー半導体需要にも対応していく所存である。

また、新金属協会の「半導体サプライチェーン材料規格研究会」と連携し、パワー半導体向け材料の標準化活動を経済産業省の支援も受けて推進しており、パワー半導体用ウエーハの低炭素濃度評価分野において、今後のシリコンサプライチェーンに有用な新金属協会規格を成立させ、更にJIS規格化を進めている。

〔今後のシリコン業界の課題〕
①需要構造変化と品質高度化への対応
1)最先端デバイスの高精度要求への対応
 2)環境・省エネルギー用パワー半導体への対応
3)生産性向上と不断のコスト低減
②世界的に割高な国内電力料金への対応
③拡大する半導体市場への安定供給
④シリコン産業における人材確保
⑤顕在化する地政学的リスクに対応したサプライチェーンの多岐化・安定化

                              - 以上 -

本プレスリリースの取り扱いについて

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