一般社団法人新金属協会

シリコン部会プレスリリース(2025年11月)

シリコン部会(部会長:⾕⽥⾙ 悟 株式会社SUMCO 社⻑室 経営企画部 次⻑)は、11月6日に2024年の実績、2025・2026年の状況・見通しについて公表しました。

1.2024年の実績

1-1)2024 年の世界半導体市場は、自動車の制御や家電製品の省エネ化、産業機器など、多岐にわたる分野で広く使用されてるレガシー品では未だ不透明な局面が続くものの、生成AI 需要が大きく市場を牽引しており、まだら模様の回復基調にある。

WSTS 統計によれば、2024 年の金額ベースの市場規模は前年比20%増の6,276 億ドルと過去最高を更新したものの、シリコンウエーハ出荷面積と相関があるIC 半導体出荷個数については前年比4%増の3,502 億個に留まっている。

1-2)2024 年の世界シリコンウエーハ市場は、300mm は前述のAI 需要がけん引する形で特に先端品を中心に需要回復を示しているものの、200mm 以下に関しては民生・車載向け需要の低迷に伴い低調な状況が続いている。SEMI 統計によると、2024 年の半導体用シリコンウエーハ出荷面積は前年比3%減の123 億平方インチ、出荷金額は前年比6%減の115 億ドルとなり、1 平方インチ当りの平均単価は前年比4%減の0.94 ドルとなった。

1-3)当部会集計の国内高純度シリコン統計によれば、2024 年の国内単結晶生産は前述のシリコンウエーハ市場とほぼ同等の傾向を示し、年間では前年比2%減の9,434 トンであった。

 また、国内単結晶の販売についても前年比4%減の10,396 トンであり、その内訳は海外向けが前年比    3%減の7,113 トンであったのに対し、国内向けは前年比7%減の3,283 トンであった。その結果、輸出比率は前年の67%から68%に上昇した。

2. 2025年・26 年の見通し

2-1)2025 年前半の半導体市場は2024 年に続いて全体としては好調を維持しており、2025年後半及び2026 年も好調と予想されている。

 2025 年春季WSTS 予測によれば、2025 年の半導体市場は前年比11%増の7,009 億ドルと予想され、更に2026 年も前年比9%増の7,607 億ドルまで伸長するものと予想されている。地域別では、市場の5 割強を占めるアジア地域が2025 年は前年比10%増に対して2026 年は前年比9%増、3 割を占めるアメリカが2025 年は前年比18%増に対して2026 年も10%増と2 桁成長が見込まれている。

 また、IC 製品別では、市場の3 割を占めるメモリが2025 年には前年比12%増に対して2026 年には前年比16%増と好調を維持、4 割を占めるロジックが2025 年には前年比24%増に対して2026 年には前年比7%増と更に大きく伸長すると予測されている。

2-2)当部会ではWSTS や各種予測も踏まえ、シリコンウエーハ市場は低調なレガシー品需要の影響もあり2025 年はほぼ前年横ばい、本格回復は2026 年からと予想する。

 2025 年の国内単結晶生産は前年比1%増の9,573 トンと見込まれるが、2026 年には前年比15%増の11,000 トンと推測している。

 同様に2025 年の国内単結晶販売についても前年比1%増の10,550 トンを見込んでおり、内訳として内需は3,331 トン、輸出は7,218 トンと予想する。これに対して2026 年には国内単結晶販売は12,122 トンまで回復すると想定し、内需は3,828 トン、輸出は8,294 トンと予想する。

 更に多結晶需要についても、半導体向けシリコンウエーハ需要同様、2025 年は前年横ばい、2026 年に回復するシナリオを想定している。

3.今後の課題

シリコン業界を取り巻く事業環境は米中貿易摩擦に代表される地政学的リスクの顕在化やAI の更なる進化等に伴う半導体の微細化・三次元化の進展など、様々な需要構造変化が続いており、更には国内固有の懸念事項として世界的に割高な国内電力料金や燃料費の問題も懸念材料として挙げられる。

シリコン部会加盟各社はこれらの変化へ対応するために、最先端半導体対応の為の品質の更なる向上や生産性向上及び合理化による不断のコスト低減に取り組んでおり、更には環境負荷軽減に向けたパワー半導体需要にも積極的に対応していく所存である。

〔今後のシリコン業界の課題〕

①需要構造変化と品質高度化への対応

 1)最先端デバイスの高精度要求への対応

 2)環境・省エネルギー用パワー半導体への対応

 3)生産性向上と不断のコスト低減

②世界的に割高な国内電力料金への対応

③拡大する半導体市場への安定供給

④シリコン産業における人材確保

⑤顕在化する地政学的リスクに対応したサプライチェーンの多岐化・安定化

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本資料の取り扱いについて

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