新金属協会会長就任にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
日本経済は、新型コロナウイルスによる影響が緩和され、経済活動が正常化に向かっていることにより総じて堅調に推移しつつも、インフレの進展や、国際情勢の悪化を受けた原燃料等の高騰やそれに伴う電力価格の上昇などが、私たちの生活や企業業績にマイナスの影響を与えています。このようなマクロ環境の中にあって、新金属業界におきましては、自動車需要の回復やグリーン・デジタル関連需要の拡大といった明るい話題がある一方で、足元においては、各種電子デバイスの需要低迷を受けサプライチェーン全体での在庫削減の動きが強まったことにより、調整局面が続いています。
当協会に所属する各社におきましては、高機能素材の安定供給責務を果たすために、研究開発投資の拡大、製造設備の高度化などが不可避となっている中、原発再稼働の遅れによる電気料金の値上げ、国内製造業の海外転出、自然災害対応など、従前以上に複雑な課題への対応が不可欠となっています。さらには、人材不足が深刻化する中で、高い技術力、商品開発力を常に維持しつつも、革新への取り組みもより一層進めていく必要があります。これに加え、特に核燃料加工業におきましては、原発再稼働の遅れにより、大変厳しい状況が継続しております。
かかる環境にあっても、中長期的な観点からは、グリーン・デジタル社会の進展に応じて当業界を取り巻く市場は引き続き成長する見込みです。また、国際情勢の緊張等を受けて、政府は、「経済安全保障推進法」により、半導体、永久磁石、重要鉱物等のサプライチェーンの強靭化を図る姿勢を鮮明にしています。このように新金属産業の取り扱う高機能素材は一層重要度を増しており、安定供給の責務を果たすため、サプライチェーンの強靭化を図り、懸念国からの供給途絶に備える体制を築くことが大きな課題となっています。
当協会としましては、新金属が情報通信、エネルギー、環境等において極めて重要な役割を果たしていることを踏まえつつ、経済安全保障の観点からも広くサプライチェーンを俯瞰し、関係官庁、関係団体とも連携を図りながら、8部会事業を軸として積極的かつ迅速な活動を進め、様々な課題への取り組みに邁進する所存でございます。
日頃からの協会活動へのご協力に改めて感謝いたしますとともに、一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
令和5年6月15日
会長 諏訪邉 武史