一般社団法人新金属協会

希土類部会

業界業況

1.磁石 2023年1月から6月までの全磁性材原料の値動きは大きな下降トレンド。酸化Ndは年初USD 112.5/㎏から始まり6月には一時USD66/kgまで下落(下落幅70%)。酸化DyはUSD358/kgからUSD305/kgまで下落(下落幅17%)。酸化TbはUSD2,025/KGからUSD1...

業界業況

1.磁石

2023年1月から6月までの全磁性材原料の値動きは大きな下降トレンド。酸化Ndは年初USD 112.5/㎏から始まり6月には一時USD66/kgまで下落(下落幅70%)。酸化DyはUSD358/kgからUSD305/kgまで下落(下落幅17%)。酸化TbはUSD2,025/KGからUSD1,170/kgまで下落した(下落幅73%)。2023年1月~4月までウィズコロナ政策で中国経済は回復基調であったが、2022年の生産枠が前年(2021年)比25%増となったことを背景とした磁性材料の過剰在庫が2023年上期まで持ち越され、価格は大幅に下落。5月の連休前後は、在庫補填の動き等により市況もやや回復したが、不動産開発投資やインフラ投資の低迷により内需が減速し、6月中旬から再度下落トレンドに突入。

中国稀土集団はミャンマー国境から130キロメートル離れた中国雲南省保山市にある工業団地に、ミャンマーから輸入した中重希土を精錬・加工する新工場の建設を進めている。

2023年6月時点でのミャンマーから中国への中重希土輸入量は、2022年通期の約1万4千トン(REO)より半期で64% 増の約2万3千トン(REO)となった。

中国の2023年NdFeB生産量は推測で26.7万トン。主な用途と割合は自動車駆動モーター21.6%、自動車その他用途12.2%、風力発電6.7%、エアコン駆動モーター7.8%、電子・メカ部品14.2%。昨今の中国経済失速がどの程度生産量に影響するか懸念されているが、中国北方稀土集団及び中国稀土集団は、将来の磁性材市場の需要増加を見越し、NdFeBの増産設備導入への投資を進めている。

2.蛍光体

2023年1~6月の蛍光ランプ国内出荷個数は前年比で約24%減であった。LEDランプへの代替が進み蛍光ランプ市場は縮小傾向が続いている。電力コストの高騰や環境配慮気運の高まりが代替を加速させている。国内大手電機メーカーは既に蛍光灯器具の生産は終了しており、蛍光ランプについても順次終了に動いている。

2023年1~6月の薄型テレビ国内出荷台数は、前年同期比で約12%減であった。ステイホーム需要の収束、物価高などが影響していると思われる。若年層のテレビ離れとの論評もある。

PCやタブレット端末などのテレワーク特需も収束した。

LEDの波長変換にはレアアース系蛍光体も用いられるが使用量は極めて少ない。

また有機ELなどレアアースを用いない新たな発光材料も浸透してきた。

この分野のレアアース需要は減少した。

3.セラミックコンデンサ

2023年1~6月のセラミックコンデンサの国内生産は前年同期比27%減の4,330億個と大幅減となった。

エレクトロニクス市場はPCや基地局向け需要が幅広い用途で減少した。一方中華圏を中心としスマートフォン向けは在庫調整が適正化へ向かい増加となった。

カーエレクトロニクス向けは自動車の生産が回復傾向ではあるものの、在庫調整局面が継続されておりコンデンサとしての需要は減少した。

引き続き自動車向け需要は悪くはないため、在庫調整が解消されると徐々に回復へと向かうと思われる。

セラミックコンデンサでは脱レアアース化が浸透しており、小型化、生産者の現地生産等も重なりレアアースの使用量は低位安定した状況で大きな変化はない。

4.排ガス触媒

2023年1~6月の世界の自動車販売台数は、半導体や部品供給問題が解消に向かい、前年同期比で約10%増となり、地域によってはコロナ過前の水準にまで需要が回復している。国内自動車販売台数・生産台数においても、前年同期の落ち込みが大きかったことから、前年同期比でいずれも20%近くの増量となった。但しコロナ過前の水準には戻っていない。

自動車生産の回復基調の中で、2023年1~6月の国内の自動車排気ガス浄化用触媒生産量は4,709トンと、前年1~6月の4,334トンから9%増加し、販売量についても前年同期比で6%増となった。しかしコロナ過前の水準には至っていない。また触媒成分の貴金属価格が下がり販売単価が低下したことから、販売金額は前年同期比で80%を下回った。

5.研磨材

液晶用ガラス基板、ハードディスク用ガラス基板などに使用されるセリウム系研摩材の2023年1~6月の需要は、COVID-19による生活様式の変化に伴う需要は一巡し、低調に推移した。液晶用ガラス基板向けについては、テレビ向けの巣ごもり需要は一服、在宅勤務やオンライン授業向けのノートPCやタブレット需要も落ち着き、需要低迷が続いていると推定される。一方、ハードディスク用ガラス基板向けは、サーバー等の大容量向け需要は継続的に拡大しているものの、世界経済の不透明感による計画の後ろ倒しなどの影響により低調な状況が続いていると見られる。

活動概要

・中国から提案された希土類原料・製品各種のISO標準作成について、経済産業省国際標準課、金属課等関係課と意見交換するとともに、国内対応のために新設した研究会・委員会に部会全社が参加するなど対応を行いました。 ・新金属産業災害防止対策安全委員会における「新金属産業災害防止に関する行動計画」の策定に...

活動概要

・中国から提案された希土類原料・製品各種のISO標準作成について、経済産業省国際標準課、金属課等関係課と意見交換するとともに、国内対応のために新設した研究会・委員会に部会全社が参加するなど対応を行いました。
・新金属産業災害防止対策安全委員会における「新金属産業災害防止に関する行動計画」の策定に協力しました。
・日本の希土類需要推移を集計し、公表するとともに、製品ごとの需要状況等について経済産業省金属課及び資源エネルギー庁鉱物資源課と情報・意見交換会を開催しました。
・中国が特恵関税対象国から卒業するに当たり、一部の加工用原材料品が課税対象品となることから、輸入関税非課税品の対象となるように折衝を開始しました。
・協会ホームページで部会活動、業界動向等の情報を広く発信するための議論を行い、発信内容を検討しました。

年表

18世紀
1794:レアアースの発見
19世紀
19C末:ガスマントル(トリウム、セリウム)が工業化
1940年代
1947:レアアース15元素すべて明らかになる
ブラジル、インド、アメリカでモナザイト鉱石の処理本格化
1950年代
1951:米Molycorp,Montain Pass操業開始
1952:IndianRareEarths、操業開始
1954:モナザイトの世界生産量1万トン
1956:米W.R Grace社、希土類生産開始
1957:中国で白雲鉱処理開始
1960年代
モナザイト鉱石の生産はブラジル、インド、アメリカ、南アフリカ、オーストラリア
アメリカでプラセオ黄の顔料が開発される
FCC触媒量産
1970年代
アラスカの天然ガス輸送パイプラインにミッシュメタル添加がブームに
超磁歪材料(TbDyFe)が開発される
1977:中国から日本へ希土類原料輸入開始
1980年代
1980:中国希土工業代表団来日。協会、阪大、関係者各社訪問
1981:中国でイオン吸着鉱開発
1985:希土類鉱石の世界生産量4万トン
1987:中国、希土類原料で世界一の生産国となる
1988:第1回日中レアアース交流会開催
1990年代
オーストラリアでモナザイトの公害問題が表面化
1992:ブラジル、希土類鉱石の処理中止
1993:中国、鄧小平氏が南順講話にて「中東有石油、中国有希土」と発言
1994:マレーシア、希土類の分離中止
1997:中国、希土類製品の輸出許可制度がスタート
2000年代
2000:希土類鉱石の生産量8.1万トン中国が85%を占める
2002:中国で希土類の鉱山開発、製錬分離事業への外国企業の投資が禁じられる
2004:中国、希土類鉱石生産量9万8,000トン
2008年代
2005:中国、希土類製品の輸出に関し、増値税還付を廃止
希土類原料の価格上昇
希土類原料の中国依存度の問題
1926年代
ライター石の生産開始
1940年代
アークカーボン用フッ化セシウム量産開始
1950年代
板ガラスの研磨に酸化希土(セリウム)が本格採用される
鉄鋼用ミッシュメタル量産開始
1960年代
1962:新金属早わかりシリーズ『レアアース』刊行(新金属協会)
日立、カラーテレビ「キドカラー」発売
Y、Euに蛍光体需要出る
酸化ランタンを添加した高屈折レンズが開発される
1970年代
セラミックコンデンサーに酸化ランタンが使用される
ソニー、ウォークマン発売
SmCo磁石の需要拡大
自動車三元触媒の登場。酸素センサーの開発(Ce、Y)
1980年代
1982:日本希土類学会創立
三波長蛍光ランプの普及(Y、Eu、Tb)始まる
ミノルタ、オートフォーカスα7000発売
住友特殊金属、NdFeB磁石を発表
世界的な超伝導フィーバー(Y)
1990年代
ニッケル水素電池が実用化
ソニー、ミニディスク発売(Tb、Dy)
自動車用の紫外線吸収ガラスにセリウムが使用される
1993:希土類磁石がフェライト磁石の販売額を抜く(1,767トン、488億円)
携帯電話が普及し始める
Windows95発売。
HDD向けネオジ磁石の需要拡大
トヨタ初代プリウス発売
2000年代
ランタン添加の高性能フェライト磁石普及
京都議定書批准による省エネ、環境問題から、モーター、電池の需要増大
【課題】燃料電池の開発、磁気冷凍の開発、コージェネデバイスの普及、希土類原料のリサイクル促進
2005年代
2代目プリウスでハイブリッドカーが普及(ネオジ磁石、ニッケル水素電池の需要拡大)
フラットパネルディスプレイの普及(PDP、液晶)
1940年代
1943:探照灯用フッ化希土生産のため日本金属化学(現・太陽鉱工)が設立される
1947:清美化学(現・セイミケミカル)設立
1949:日本金属化学、新日本金属化学に社名変更
1949:三徳金属工業(現・三徳)設立
1950年代
1957:日産稀元素化学設立。希土類化合物の生産開始
1957:和光物産、IREの総代理店となる
1960年代
1963:三井金属、三井物産と合弁で、三金レアアースを設立
1966:信越化学、高純度イットリアの企業化発表
1968:三井金属、東北金属工業との合弁で日本イットリウムを設立
1969:三金レアアース、三井金属の完全子会社となる
1970年代
1970:新日本金属化学、三光稀元素静岡工場を買収
1971:三徳金属、希土類金属の酸化物電解法を工業化
1974:三菱商事、Molycorpの総代理店になる
1975:三菱化成、Malaysian Rare Earth Corp(MAREC)を設立
1979:三菱化成、ノルウェーMEGONと合弁で、MCI-MEGONを設立
1980年代
1980:三菱化成、マレーシアにAsian Rare Earth(ARE)を設立
1980:三井金属、三金レアーアースを解散
1984:昭和電工、希土類合金の製造を開始
1985:住友軽金属工業、希土類母合金の生産開始
1985:三井金属鉱業、三池メタル工場で中国イオン鉱の処理開始
1986:ローヌプーラン、住友金属鉱山と合弁で、日本レアアースを設立
1986:三菱金属、アメリカReactive Metalと合弁で、NEOMETを設立
1990年代
1990:住友金属工業、Molycorpと合弁で、住金モリコープを設立
1994:日本レアアース解散
1997:同和レアアース解散
1997:三菱化学、黒崎工場の希土類生産を中止
1998:三菱マテリアル、アメリカ子会社Neometを清算
1999:三徳、アメリカ子会社Santoku Americaを設立
2000年代
2001:住友軽金属工業、希土類母合金の製造中止
2001:三徳、中国包頭に子会社の包頭三徳電池材料有限公司を設立
2002:昭和電工、中国包頭にネオジム合金を製造する合弁会社を設立

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