一般社団法人新金属協会

希土類部会

業界業況

1.磁石 2022年の磁性材原料の値動きはTb以外大きく下げに転じた。酸化Ndは年初USD143.80 /kgから始まり年末にはUSD112.50/kgまで下落。(下落幅21.7%) 酸化DyはUSD457/kgからUSD358/KGまで下落。(下落幅21.7%)唯一酸化TbだけがUSD1,775/...

業界業況

1.磁石
2022年の磁性材原料の値動きはTb以外大きく下げに転じた。酸化Ndは年初USD143.80 /kgから始まり年末にはUSD112.50/kgまで下落。(下落幅21.7%) 酸化DyはUSD457/kgからUSD358/KGまで下落。(下落幅21.7%)唯一酸化TbだけがUSD1,775/kgからUSD2,025/kgまで上昇し、上昇幅14%であった。Tbの上昇要因は、ミャンマーからの原料輸入減を見越した中国4大集団が在庫を抱え込んだと思われる。
2021年末から2022年3月上旬まで磁性材原料(Nd,NdPr)の急騰が続き、一時はUSD190/㎏の高値を付けた。供給側の強行な値上げに対して需要側が業を煮やし中国政府へ適正価格を訴求、中国政府の介入により価格調整が行われた。その一方でCOVID-19のオミクロン株が上海で急拡大し市内がロックダウン。この影響で中国経済失速し需要も激減。更に8月には中国生産枠25%増枠(21万㌧)の発表も重なり8月にかけて市況価格が急速に軟化し、一時はUSD93/㎏まで値下がった。
2022年末にかけ一部磁石メーカーの在庫補填のため少量での取引が行われことで、価格がUSD112.50まで戻した。
一昨年の中国6大集団が4大集団に集約に続き、昨年12月には中国稀土集団と広東稀土がパートナー提携、北方稀土集団は長汀金龍(厦門タングステン傘下稀土会社)に出資。
実質、中国レアアース市場は中国稀土集団と北方稀土集団の2大集団へ統合。また、北方稀土集団は世界最大規模のレアアース磁石材料合金工場建設の為、傘下の4社(内蒙古包鋼希土磁性材料有限責任公司、寧波包鋼展昊新材料有限公司、北京三吉利新材料公司、安徽包鋼希土永磁合金製造有限責任公司)を統合し、内蒙古北方稀土磁性材料有限責任公司を設立。目的は磁性材料事業の精鋭化、レアアース製品下流産業の強化、競争力や市場シェアの向上を図り、現NdFeB合金生産能力8万トンを5ヵ年計画(2021~2025年)で15万トンを目指すというもの。
2022年ミャンマーから中国へのレアアース原料の輸入は一昨年に続き、ミャンマー国内の政治不安と中国コロナ政策によるロックダウンで輸入量が対前年比63%減の1万4千トンまで減少。
中国の2022年のNdFeB生産量は推測で24.6万トン。主な用途と割合は自動車駆動モーター18.8%、自動車その他用途11.3%、風力発電7%、エアコン駆動モーター7.4%、電子・メカ部品15.2%2023年磁性材の潜在的需要はあるものの中国コロナ政策効果でどの程度中国経済が回復かによって大きく変動すると思われる。短期間では需要回復兆しは見えていないが、GW明けの市場動向次第と思われる。

2.蛍光体 
2022年1~12月の蛍光ランプ国内出荷個数は前年比で約14%減であった。LEDランプへの代替が進み蛍光ランプ市場は縮小傾向が続いている。環境配慮気運の高まりや電力コストの上昇も代替を加速させている。
2022年1~12月の薄型テレビ国内出荷台数は、前年同期比で約10%減であった。ステイホーム需要が一段落した。また、物価高の影響もあり冬季オリンピック/パラリンピックやサッカーワールドカップは、需要喚起につながらなかった。
PCやタブレット端末などのテレワーク特需も収束した。
LEDの波長変換にはレアアース系蛍光体も用いられるが使用量は極めて少ない。
また近年はレアアースを用いない新たな発光材料も次々と登場している。
総じて蛍光体用レアアースの需要は減少した。

3.セラミックコンデンサ
2022年1~12月のセラミックコンデンサの国内生産は前年同期比約20%減の11,275億個となった。エレクトロニクス市場はPCやタブレット端末やデータセンター向け需要が低迷、継続した。
カーエレクトロニクス向けは自動車の生産が緩やかに回復しEV化による使用部品数も増加したことで需要は堅調に推移した。
ロシアのウクライナ侵攻などによる地政学的リスクによるエネルギー価格の高騰に伴い、省エネ、再生エネルギー関連、二次電池、蓄電池等の需要は高いレベルで推移した。
おおむね、自動車向け需要は悪くはないため、半導体材料の不足が解消となれば、さらに堅調に推移、回復へ向かうと思われる。
しかしながら、セラミックコンデンサでは脱レアアース化が浸透しており、小型化、生産者の現地生産等も重なりレアアースの使用量は低位安定した状況で大きな変化はない。

4.排ガス触媒
2022年の世界の自動車生産は、とくに後半においてCOVID-19の影響が軽減し持ち直したが、いまだ半導体不足の影響が継続しており、結果として世界の自動車生産台数は2021年比で微増にとどまった。国内の自動車生産台数も2021年とほぼ同数と伸び悩んだ。
そのような状況下、2022年1~12月の自動車排気ガス浄化用触媒の生産量は9,418トンと、2021年1~12月の10,314トンから9%減、販売量については2021年から7%減、販売金額については2021年から5%減となった。上記の自動車生産台数と比較しても低調な結果となった。

5.研磨材
液晶用ガラス基板、ハードディスク用ガラス基板などに使用されるセリウム系研摩材の2022年1~12月の需要は、COVID-19による生活様式の変化に伴う需要は一巡し、低調に推移した。液晶用ガラス基板向けについては、テレビ向けの巣ごもり需要は一服、在宅勤務やオンライン授業向けのノートPCやタブレット需要も落ち着き、サプライチェーン全体で過剰在庫圧縮の動きとなり下落した。一方、ハードディスク用ガラス基板向けは、SSDへの置き換えトレンドは続いており、サーバー等の大容量向け需要は継続的に拡大しているものの勢いは一服し、全体需要はやや軟調であったと見られる。

活動概要

・中国から提案された希土類原料・製品各種のISO標準作成について、経済産業省国際標準課、金属課等関係課と意見交換するとともに、国内対応のために新設した研究会・委員会に部会全社が参加するなど対応を行いました。 ・新金属産業災害防止対策安全委員会における「新金属産業災害防止に関する行動計画」の策定に...

活動概要

・中国から提案された希土類原料・製品各種のISO標準作成について、経済産業省国際標準課、金属課等関係課と意見交換するとともに、国内対応のために新設した研究会・委員会に部会全社が参加するなど対応を行いました。
・新金属産業災害防止対策安全委員会における「新金属産業災害防止に関する行動計画」の策定に協力しました。
・日本の希土類需要推移を集計し、公表するとともに、製品ごとの需要状況等について経済産業省金属課及び資源エネルギー庁鉱物資源課と情報・意見交換会を開催しました。
・中国が特恵関税対象国から卒業するに当たり、一部の加工用原材料品が課税対象品となることから、輸入関税非課税品の対象となるように折衝を開始しました。
・協会ホームページで部会活動、業界動向等の情報を広く発信するための議論を行い、発信内容を検討しました。

年表

18世紀
1794:レアアースの発見
19世紀
19C末:ガスマントル(トリウム、セリウム)が工業化
1940年代
1947:レアアース15元素すべて明らかになる
ブラジル、インド、アメリカでモナザイト鉱石の処理本格化
1950年代
1951:米Molycorp,Montain Pass操業開始
1952:IndianRareEarths、操業開始
1954:モナザイトの世界生産量1万トン
1956:米W.R Grace社、希土類生産開始
1957:中国で白雲鉱処理開始
1960年代
モナザイト鉱石の生産はブラジル、インド、アメリカ、南アフリカ、オーストラリア
アメリカでプラセオ黄の顔料が開発される
FCC触媒量産
1970年代
アラスカの天然ガス輸送パイプラインにミッシュメタル添加がブームに
超磁歪材料(TbDyFe)が開発される
1977:中国から日本へ希土類原料輸入開始
1980年代
1980:中国希土工業代表団来日。協会、阪大、関係者各社訪問
1981:中国でイオン吸着鉱開発
1985:希土類鉱石の世界生産量4万トン
1987:中国、希土類原料で世界一の生産国となる
1988:第1回日中レアアース交流会開催
1990年代
オーストラリアでモナザイトの公害問題が表面化
1992:ブラジル、希土類鉱石の処理中止
1993:中国、鄧小平氏が南順講話にて「中東有石油、中国有希土」と発言
1994:マレーシア、希土類の分離中止
1997:中国、希土類製品の輸出許可制度がスタート
2000年代
2000:希土類鉱石の生産量8.1万トン中国が85%を占める
2002:中国で希土類の鉱山開発、製錬分離事業への外国企業の投資が禁じられる
2004:中国、希土類鉱石生産量9万8,000トン
2008年代
2005:中国、希土類製品の輸出に関し、増値税還付を廃止
希土類原料の価格上昇
希土類原料の中国依存度の問題
1926年代
ライター石の生産開始
1940年代
アークカーボン用フッ化セシウム量産開始
1950年代
板ガラスの研磨に酸化希土(セリウム)が本格採用される
鉄鋼用ミッシュメタル量産開始
1960年代
1962:新金属早わかりシリーズ『レアアース』刊行(新金属協会)
日立、カラーテレビ「キドカラー」発売
Y、Euに蛍光体需要出る
酸化ランタンを添加した高屈折レンズが開発される
1970年代
セラミックコンデンサーに酸化ランタンが使用される
ソニー、ウォークマン発売
SmCo磁石の需要拡大
自動車三元触媒の登場。酸素センサーの開発(Ce、Y)
1980年代
1982:日本希土類学会創立
三波長蛍光ランプの普及(Y、Eu、Tb)始まる
ミノルタ、オートフォーカスα7000発売
住友特殊金属、NdFeB磁石を発表
世界的な超伝導フィーバー(Y)
1990年代
ニッケル水素電池が実用化
ソニー、ミニディスク発売(Tb、Dy)
自動車用の紫外線吸収ガラスにセリウムが使用される
1993:希土類磁石がフェライト磁石の販売額を抜く(1,767トン、488億円)
携帯電話が普及し始める
Windows95発売。
HDD向けネオジ磁石の需要拡大
トヨタ初代プリウス発売
2000年代
ランタン添加の高性能フェライト磁石普及
京都議定書批准による省エネ、環境問題から、モーター、電池の需要増大
【課題】燃料電池の開発、磁気冷凍の開発、コージェネデバイスの普及、希土類原料のリサイクル促進
2005年代
2代目プリウスでハイブリッドカーが普及(ネオジ磁石、ニッケル水素電池の需要拡大)
フラットパネルディスプレイの普及(PDP、液晶)
1940年代
1943:探照灯用フッ化希土生産のため日本金属化学(現・太陽鉱工)が設立される
1947:清美化学(現・セイミケミカル)設立
1949:日本金属化学、新日本金属化学に社名変更
1949:三徳金属工業(現・三徳)設立
1950年代
1957:日産稀元素化学設立。希土類化合物の生産開始
1957:和光物産、IREの総代理店となる
1960年代
1963:三井金属、三井物産と合弁で、三金レアアースを設立
1966:信越化学、高純度イットリアの企業化発表
1968:三井金属、東北金属工業との合弁で日本イットリウムを設立
1969:三金レアアース、三井金属の完全子会社となる
1970年代
1970:新日本金属化学、三光稀元素静岡工場を買収
1971:三徳金属、希土類金属の酸化物電解法を工業化
1974:三菱商事、Molycorpの総代理店になる
1975:三菱化成、Malaysian Rare Earth Corp(MAREC)を設立
1979:三菱化成、ノルウェーMEGONと合弁で、MCI-MEGONを設立
1980年代
1980:三菱化成、マレーシアにAsian Rare Earth(ARE)を設立
1980:三井金属、三金レアーアースを解散
1984:昭和電工、希土類合金の製造を開始
1985:住友軽金属工業、希土類母合金の生産開始
1985:三井金属鉱業、三池メタル工場で中国イオン鉱の処理開始
1986:ローヌプーラン、住友金属鉱山と合弁で、日本レアアースを設立
1986:三菱金属、アメリカReactive Metalと合弁で、NEOMETを設立
1990年代
1990:住友金属工業、Molycorpと合弁で、住金モリコープを設立
1994:日本レアアース解散
1997:同和レアアース解散
1997:三菱化学、黒崎工場の希土類生産を中止
1998:三菱マテリアル、アメリカ子会社Neometを清算
1999:三徳、アメリカ子会社Santoku Americaを設立
2000年代
2001:住友軽金属工業、希土類母合金の製造中止
2001:三徳、中国包頭に子会社の包頭三徳電池材料有限公司を設立
2002:昭和電工、中国包頭にネオジム合金を製造する合弁会社を設立

会員企業

関係学会